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2005/04/27

リスク管理とは何か

昔、技術史を履修したときに授業で公害対策について先生が言っていたことが、卒業から15年も経つが未だに頭の片隅に残っている。

先生『なぜ企業は公害対策をやるのか?』
学生『それは人に被害をもたらすのだから当然なのではないでしょうか?』
先生『それは違う。裁判で負けて大量の補償金を支払う羽目になるからだ』

当時はリスク管理という言葉はあったのかどうか知らないのだが、少なくとも授業を受けている私にはリスク管理という意識は無かった。
先生の言いたかった事は、企業にとっての公害対策とは事故があったときに支払う金を基準に考えるということらしい。当時はそのように認識した憶えがある。
現在に至っても私の中ではそれはそれで考え自体は間違っていないとは思う。結局安全確保のための投資と事故発生頻度とのバランス、費用対効果の話になるのだろう。この辺りの話は損害保険屋の方が詳しいはず。一番身近なものは自動車損害保険だろう。

具体的に言うと、安全確保のための設備投資として1000万円必要で、それが定期メンテナンスで毎年100万円かかる場合では、10年という期間で考えると1900万円の投資が必要になってくる。10年間のうちに事故の発生頻度を2として、事故が発生した場合の損害見積が950万円以上であれば設備投資は必要ということになるが、そうでない場合には逆に損することになる。これは自動車事故を起こしてしまっても損害賠償金を支払うだけの現金を持っていれば保険に加入するのは損という事に等しい。

しかしこれはあくまでも金銭の支出という側面しか考慮していない場合の話で、実際には企業イメージを損なう事になり、その分の金銭的価値の下落も考慮しなければ意味が無い。
企業イメージとはブランド価値であり、それは企業の業種によって特色が違う。
代替の利くものであれば一企業のブランド価値が下がって、そこが倒産しようとも世間は気にしない。しかし今回のJRの事故のように代替が利かないものでのブランド価値下落となると世間に与える影響は計り知れないものになる。

100%の安全を保障することなど不可能だ。そんなの保障できる奴はいない。だから事故が発生しても大事に至らないように二重三重の安全対策を施さなくてはいけない。
安全対策には色んなパターンが考えられる。例えば誰でも操作できる機械があり、それは誰がどんな操作をしても大事故には至らないようにシステムを構築するとか、逆に熟練した人間しか操作できないように免許制にして機械の使い勝手を優先させる設計にするなどである。コスト的には前者が高く後者が安くつくだろう。
投資の金額のみ考えると後者で考えがちであるが、いくら熟練したものとは言っても操作ミスが皆無という保証はどこにも無い。したがって事故発生確率を抑えるためには前者の方式でシステムを構築する必要があると考える。

産業機械に携わっているので今回の事故では考えされらることが多い。安全とは何か。安全を確保しつつ費用を安く抑えるにはどうするか。
今回の事故で車両の軽量化も話題に取り上げられているが、車両メーカーにとっては今回のような事故はまさに想定外だろう。
想定されるべきものは脱線であり、脱線しても今回のように転覆しないような対策を考え、それを抑えるべく制限速度をもっと下げるとか、速度超過したら自動でブレーキがかかるようなシステムにするとかは実施していても良かったのではないだろうかと思う。そういう意味ではJR西日本の責任は重いと思う。

なぜ起こる鉄道事故
by 山之内 秀一郎
朝日新聞社 (2005/07/15)

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