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2005/07/09

アスベストと中皮腫

ご存知の通り、アスベストとは石綿の事で昔理科の実験とかでビーカーをアルコールランプで加熱する場合にビーカーの下敷きに使っていた。
それからも分かるように断熱材としては良好な特性を持っていたため、屋内の断熱材として吹き付けられて使用されることが多かった。

先週から今週にかけてクボタニチアス(広報資料はPDFで同サイトで配布)などでアスベストによる被害で中皮腫になって亡くなられた方が多数いるという報道があった。
中皮腫とは中皮に腫瘍が出来る病気のことで、中皮とは内蔵を覆っている膜(胸膜とか腹膜など)の表面をを覆っている皮のことである。中皮腫には悪性と良性とがある。

当初は中皮腫とアスベストの因果関係が分からなかったので、それを責められるメーカーにとっては酷な話じゃないかと思っていた。
しかし『中皮腫』でググったら国立がんセンターのサイトにアスベストと中皮腫との因果関係について記載されている。

>悪性中皮腫はかなりまれな腫瘍ですが、その発症には、アスベスト(石綿)
>が関与していることが多いといわれています。この腫瘍はかなりまれなもの
>であり、例えば悪性胸膜中皮腫は肺がんに比べるとその頻度は1%以下です。

つまり中皮腫の発生率から考えるとアスベストが原因であるという蓋然性は非常に高いという印象を受ける。しかし僕自身が中皮腫の原因としてアスベスト以外のものがあるのかどうか分からないためにその蓋然性が高いというのはせいぜい印象でしかなく、裏付けがあるものではない。

しかし国立がんセンターのサイトでは中皮腫で労災申請をすると殆ど通ると書いてある。つまり厚生労働省も『中皮腫の原因はアスベストである』と認識している事を示していると考えられる。

2002年6月まで日本政府は『アスベストは管理して使用すれば安全性は十分である』という方針を採っていた。それまでは年間約20万トンものアスベストが日本に輸入されていたらしい。しかしそれ以降は政策を転換して2003年10月から労働安全衛生法施行令が改正されて『原則として使用禁止』となった。ここで注意したいのが『原則として使用禁止』である。全面使用禁止ではない。この時に使用禁止になったのは多くの種類があるアスベストのうち10種類のみである。ちなみにEUなどでは当時すでに全面禁止とされている。

ちょっと調べてみたが実は『1972年にILO、WHOで石綿が発ガン性物質であるということが認定され』ている(平成17年6月30日、厚生労働省事務次官定例記者会見概要より)。また潜伏期間も30年程度ということを厚生労働省側は見解を出している。

まぁ政府としては危険性は認識していたが、アスベストによる中皮腫の発症まで20~30年という非常に長い潜伏期間のために患者数が少ないのでその危険性を甘く見ていたというのと、アスベストに代わる材料が無いのでしっかり安全管理すれば大丈夫だという思い込み(敢えて思い込みという表現を使わせていただく)も全面禁止に至らなかった理由だろう。

管理すると言っても目に見えない繊維質のものが肺に吸い込まれるのを完全に管理できるわけが無いので早々に禁止すべきだったのだろうと思う。
勤務先で一生懸命仕事をして、その仕事の所為で病気になられた方々にとっては皮肉な事である。また工場の周りで生活していてアスベストとは全く関係の無い人たちにとっては多大な迷惑だろう。

誰が責任を取るのかという話になるとこれはクボタやニチアスなどの会社だけの責任では済まされないと思う。やはり行政の責任は大きいと思う。

製造業勤務の身としては安全性とコストを天秤にかける場合が往々にしてある。安全性を追求することは必須なのだが、事故の発生を完全に抑える事は出来ないので、事故発生確率をどう見積もるかが重要になってくる。
現代社会では、『危険かもしれないけれど政府が特に規制していないから対策をしなくてもいい』という判断では経営が立ち行かなくなっていると感じる。政府の対応が後手に回る可能性も有るという事を考えると、リスク判断は経営者が判断すべきであろう。もしそのリスク回避をすることによって製造コストが増大し利益を圧迫することになってもそれはやるべきだと思う。

言うは簡単だが、経営者からすると利益が圧迫されることによって収益が悪化し、結果としてその市場から撤退するなんて判断は簡単に出来ないだろう。特に小さな会社で多角的な商品の品揃えがある訳ではない会社だと会社の存亡に関わる事だ。

だからこそ中小企業を保護するためにも労働安全衛生に関しては政府は民間より先を歩いていなければならないのだと思うのだが。
こういうニュースを見るたびに製造業のリスク管理というものは大変だと感じる。

ノンアスベスト社会の到来へ―暮らしの中のキラーダストをなくすために
by 石綿対策全国連絡会議, 中皮腫・
じん肺・アスベストセンター
かもがわ出版 (2004/11)

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(7/29追記) お恥ずかしい話ですが、タイトルにおいて『中皮腫』を『中皮種』と誤記していましたので、誤字を訂正しておきました。文中にも一箇所発見したので併せて訂正。


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